不妊治療の保険適用:企業の人事が想定しておくべき課題と影響とは

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菅内閣が重要政策として掲げたため、にわかに大きな動きを見せ始めた不妊治療の保険適用。

保険適用・助成金の拡大(保険適用されるまでの救済措置として、現状の助成金の拡大が検討されている)に伴い、不妊治療を受ける側の心理的なハードルが下がることで、今後ますます不妊治療に取り組む社員が増加することが想定されます。

※以下に記載することは、保険適用・助成金拡大の議論がどのようになされているか、という事を報道ベースでお伝えするものです。政策の決定ではありませんのでご注意ください。今後の議論の中で変化していくことも想定されますので、最新の決定事項についてはご自身の責任で確認をお願いいたします。

不妊治療の保険適用については議論するべき点が多く、実現までに数年かかるといわれていますが、助成金の拡大については大きな動きがあったようです。(2020年10月1日現在)

不妊治療を受ける人への助成制度に関し、厚生労働省は30日、現在の所得制限を撤廃し、730万円以上の世帯も補助する方向で検討に入った。菅義偉首相が少子化対策の柱として打ち出した保険適用拡大は議論に一定の時間がかかるため、まずは既存制度を拡充し、幅広い世帯を対象に経済的な負担を軽減する。年末までの予算編成過程で詳細を詰め、2021年4月から実施する方針。(2020年10月1日共同通信報道より抜粋)

まず私達が注目しなければならいのは、2点です。

  1. <所得制限の撤廃>

    これまでの助成金条件は夫婦合算で所得が730万円以下でした。共働き世帯の場合には、双方が正社員だった場合に730万を超えるケースが多く、治療を受ける上での足かせになってきました。今回の引き上げが実際に行われると、所得条件が撤廃されるため、これまで所得条件が足かせとなって不妊治療をしていなかったカップルが、積極的に不妊治療を行う可能性があります。つまり、御社の中で、不妊治療中の社員がこれまで以上に増える可能性があるのです。

  2. <開始時期>

    2021年4月で検討中という事で、あと半年で制度がスタートする可能性があります。

このような流れの中で来年以降、不妊治療中の社員の増加は職場にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、考えていきます。

精神的な負担を抱える社員の増加

不妊治療には、様々な精神的ストレスがかかります。「また妊娠できなかった・流産してしまった」という悲しみや焦燥感、高額な治療費に関するストレス、仕事と不妊治療の両立に関するストレス、治療そのものによるストレスなどです。

不妊治療を困難と感じる人のうち、実に7割に当たる人が在籍する部署を去るというデータも出ており、不妊治療と仕事の両立がいかに困難であるかを物語っています。

部署の異動だけではなく、不妊治療を受けやすい企業への転職といったことも起こりかねません。

不妊治療を行う男性社員の増加

 

カップルの不妊の原因の半分は、男性にあるということがWHOの調査でわかっています。しかし日本では「不妊に関わる検査や治療は女性が行うもの」という認識がまだまだ根強く、男性不妊の発見・治療が遅れがちになっている現状があります。

今後、メディアで不妊治療が大きく取り上げられる中で、それに付随する形で男性不妊にも必ずスポットライトが当たる様になってくるでしょう。そして、男性自身の病院の通院の機会も増えてくるでしょう。

それに伴い今まではあまりクローズアップされていなかった男性不妊にも、企業が対応するシーンが増えてくるはずです。

 

上司の無自覚なハラスメント

 

  • 「いつ妊娠するの?」
  • 「また休むの?今月何回目?」
  • 「今妊娠されると困るなあ」
  • 「え、男なのに不妊治療をするの?」

こんな管理職は皆さんの職場にはいませんか?

最近では、不妊治療や妊活に関するハラスメントをプレマタニティ・ハラスメントと呼ぶようになってきました。時には上司の悪気のない言葉がハラスメントに繋がる可能性があります。今後不妊治療を行う社員が増えてくる中で、このようなハラスメントを起こさない為の策を講じる必要があります。

 

テレワークによる信頼関係への影響

 

不妊治療にはいくつかステップがあるので一概に言う事は出来ませんが、例えば高度生殖医療だと月に4~10回の通院が必要になります。


出典:厚生労働省(2017)「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業 調査結果報告書」

テレワークの影響で「部下が仕事中に何をしているのかが把握できない」と嘆く管理職は多く、マネジメントをする上での大きな課題になっているのはご存じのとおりです。

そのような中で更に突発的に発生する不妊治療による休暇は、上司と部下の信頼関係に大きな影響を与えてしまう可能性があります。

では人事は、不妊治療社員の増加に向けてどのような対応をとる必要があるのでしょうか。

次回は人事がとるべき対応について書いていきたいと思います。

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