女性管理職比率の目標と推移

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2020年4月より、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業も義務化されたことを受け、女性活躍推進に取り組む企業はここ数年でますます増えてきています。行動計画として選択される項目については多岐にわたりますが、多くの企業が取り組んでいるものの一つが「女性の管理職比率」。「自社では結構頑張ってるけど、世の中的にはどうなってるの?」と気になる人も多いと思います。そこで、このコラムでは、女性の管理職比率について、目標として設定されている数値や企業における現状などについてみなさんと一緒に確認してみましょう。

女性の管理職比率の目標と推移

1.女性管理職比率の目標設定の変化

2003年6月男女共同参画推進本部の決定により、いわゆる「2020年30%」の目標が公表されました。具体的には、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」とするものです。

その決定から約10年を経て、女性活躍推進法が施行されたのが2015年。その間、みなさんの会社では女性管理職比率はどのように変化したでしょうか?もしかしたら、「あまり変化がない」「やってもやっても比率が増えない…」そう頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

そして女性活躍推進法の5年目が終わろうとしている2020年に入り「第5次基本計画」の策定が始まりました。特筆すべきは「基本的な視点及び取り組むべき事項」ですが、その中には、次の項目が設けられました。

指導的地位に占める女性の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度となるよう目指して取組を進める。さらに、その水準を通過点として、指導的地位に占める女性の割合が30%を超えて更に上昇し、2030 年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。そのため、国際的水準も意識しつつ、ポジティブ・アクションも含め、人材登用・育成や政治分野における取組を強化する必要。
(出典:内閣府男女共同参画局「第5次基本計画策定専門調査会」

つまり、この項目では、2003年に定めた目標を2030年までに延長したと理解することができます。

この、やってもやっても達成できなかった2020問題。もう疲れちゃったよ…弊社の上層部は頭が固くてこれ以上進みません!そんな悲鳴も聞こえてきそうですがここからはどの様な対策が必要なのか、改めて振り返っていきましょう。

2.効果が期待されるポジティブ・アクション

女性管理職比率の目標達成のために推進が求められ、効果が期待されているものの一つがポジティブ・アクションです。

内閣府「男女共同参画局」によれば、ポジティブ・アクションとは、「社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置のこと」と定義されています。

もう少しわかりやすい解説としては、厚生労働省「女性の活躍推進協議会」によるものがあります。

固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、

  • 営業職に女性はほとんどいない
  • 課長以上の管理職は男性が大半を占めている
等の差が男女労働者の間に生じている場合、 このような差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいいます。
(出典:厚生労働省「女性の活躍推進協議会」

具体的なポジティブ・アクションの方法のアウトラインについては、次の通りです。詳しくは男女共同参画局のWEBサイトに概要が紹介されていますので合わせて確認してみてください。

(1)指導的地位に就く女性等の数値に関する枠などを設定する方式
クオータ制など性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる手法など
(2)ゴール・アンド・タイムテーブル方式
指導的地位に就く女性等の数値に関して、達成すべき目標と達成までの期間の目安を示してその実現に努力する手法
(3)基盤整備を推進する方式
研修の機会の充実、仕事と生活の調和など女性の参画の拡大を図るための基盤整備を推進する手法
(出典:内閣府「男女共同参画局」より一部抜粋

つまり、ポジティブ・アクションは、キャリア形成の機会に男女差がある場合はその差をなくし、等しく活躍の機会や環境を整備し、女性活躍のための目標とその達成の期間を定め、目標実現のために施策を実施すること、というように理解しすることができます。そして、その目標の1つとして置かれるのが、「女性管理職比率」ということのようです。

ですが、民間企業の女性管理職比率の現状を見ると、このような方法に基づく施策が必ずしも順調に成果を生んでいるとは言い難いのかもしれません。

3.女性管理職比率の目標値と現状

2015年に決定された内閣府男女共同参画局「第4次男女共同参画基本計画」では、2020年までを期限として、民間企業における「雇用者の各役職段階に占める女性の割合」について次のように目標を定めています。

  • 係長相当職 25%
  • 課長相当職 15%
  • 部長相当職 10%

これに対して、2020年7月に公表された第5次男女共同参画基本計画の中で、策定時の現状の値として公表されたものは次の通りです。(()内は2015年第4次計画との差)

  • 係長相当職 18.9%(6.1)
  • 課長相当職 11.4%(3.6)
  • 部長相当職 6.9%(3.1)

民間企業における女性管理職比率は、課長相当職や部長相当職については3ポイントほど届かず、係長相当職については6ポイントほど届いていないというのが現状のようです。

ちなみに、「第1次男女共同参画基本計画」が策定された2000年時点では、

  • 係長相当職 7%程度
  • 課長相当職 3%程度
  • 部長相当職 2%程度

という状況だったようです。

第1次の基本計画策定当時に比べると、2020年は係長級が12ポイント程度上昇、課長級が8ポイント程度上昇、部長級が5ポイント程度上昇であることを踏まえると、上位の役職になるほど女性社員の登用があまり進んでいないようにも見えます(推移は「内閣府男女共同参画局「令和2年 男女共同参画白書」」を参照ください)。

つまり、多くの企業の担当者は「まだまだ目標に届かない」と苦しそうに話をしていますが、少しずつ社会は変わってきているのですね。そう思いましょう!

4.女性社員が管理職になりたがらない理由

これまでに確認したように、第1次計画から現在に至るまで、女性の管理職比率の向上はなかなかうまく進まないというのが現状のようです。その理由・原因として考えられるものは何でしょうか。改めてそのいくつかを紹介します。

(1)ロールモデルの不在

ロールモデルとは、わかりやすくいえば、先輩や上司など、自身の将来の姿を投影し、想像できる存在のこと。これがいないことで自身が管理職になることの具体的なイメージが持てない。あるいはすでに管理職になっている女性がいわゆる「バリキャリ」で、それを見て「自分もあのようになりたくはない」と思ってしまいがちになります。人事の方と話をしていると、これは本当によく聞きます。中には「女の敵は女」という表現を使う方も多く、大きな課題だなと感じます。

(2)グラスシーリング(ガラスの天井)

「ガラスの天井の意。女性の能力発揮を妨げ、企業における上級管理職への昇進や、労使団体等における意思決定の場への登用を阻害している見えない障壁。」(出典:内閣府男女共同参画局「平成13年度女性の政策・方針決定参画状況調べ」より)

性別や人種などが理由により、たとえ能力があったとしても低い地位にとどめられてしまい、昇進が見えない壁によって阻まれている状態を比ゆ的に表現しています。一見その人を評価することとは関係のない理由が基に、男性の方に新しい仕事の機会が割り当てられたり、昇進の機会がもたらされたりすることは現在も少なくはないかもしれません。 これと並んで、オールドボーイズクラブ(タバコ部屋など、非公式で男性が多い場所で物事が決定されてしまう事)も有名ですよね。

(3)アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

「女性は管理職に不向き」「女性は結婚したら退職してしまう」「両立期の社員は家庭の時間を大事にする」というように、経験、知識、価値観などにより無意識のうちに自身のフレームで相手を解釈してしまう、言い換えれば偏見を持ってしまうということを指します。バイアスは必ずしも周囲からによるものだけではありません。女性の場合、自身の仕事の成果を過小評価してしまう方も少なくはないようですが、これも自信に対するバイアスがかかっている可能性もあります。

こういった理由を踏まえながら、企業の人事あるいはダイバーシティ推進の担当の方は、女性活躍推進をさらに進めていくことが重要になってくるでしょう。みなさんの企業ではどうでしょうか?

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