M字カーブとは。人事がおさえておきたい原因と解消法。

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女性活躍推進に取り組む企業が気になる課題の1つと言えるのが「女性社員の離職」ではないでしょうか。このコラムでは、その課題を捉えるうえで知っておきたい「M字カーブ」の現状や、そのカーブが起きてしまう原因、そしてその解消方法について考えてみたいと思います。

M字カーブとは。人事がおさえておきたい原因と解消法。

M字カーブとは

年齢階級別に女性の労働力率を見た場合、20代後半から30代の比率が他の年齢階級に比べて低下し、丁度アルファベットのMの文字のようにグラフが描かれていることから、M字カーブと呼ばれます。日本に特徴的と言われることが多いものです。

それでは、どのような特徴なのか、みなさんと確認してみましょう。

内閣府男女共同参画局「令和2年 男女共同参画白書」 を見ると、M字のくぼみとなる20代後半から30代の労働力率は、1979年では25~29歳が48.2%と最も低かったものが、 1999年では30~34歳が56.7%でくぼみの底となっています。直近の2019年のデータでは35~39歳が76.7%となり、この世代のくぼみとなっています。

このように見てみると、現在ではM字カーブの底となる年齢層は上がってきているものの、カーブのくぼみは浅くなっている(労働力率はあがっている)と理解することができます。つまり、日本のM字カーブは次第に解消しつつあるというように捉えることもできます。

皆さんはどのように感じましたか?

【補足】M字カーブの国際比較

内閣府男女共同参画局「令和2年 男女共同参画白書」 M字カーブが日本に特徴的だということを理解するために、他の国の状況と比較してみます。

内閣府男女共同参画局「令和2年 男女共同参画白書」 図表1-2-4M字カーブ主要国比較
(出典:内閣府男女共同参画局「令和2年 男女共同参画白書」

韓国は日本と同じようにM字カーブを描いていますが、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカではM字カーブは見られません。

日本のM字のくぼみとなっている30代後半の労働力率を比較してみると、韓国は60%弱と日本よりも10ポイント程度低くなっています。アメリカは日本と同程度のようです。フランスとドイツの労働力率は80%程度。スウェーデンに関しては90%程度となっています。

M字カーブが起きる原因

女性社員が、結婚、出産や育児により就業を継続することが困難になる(それらがきっかけで離職してしまう)ことがM字カーブのくぼみを作る原因と言われます。

厚生労働省の「平成30年人口動態統計」によると、2018年の女性の初婚年齢は29.4歳第一子の出産年齢は30.7歳です。結婚する前あたりの年齢階層(20代前半)の女性の労働力率がM字の一つ目の凸の部分を構成し、子供の育児がひと段落する年齢階層(40代前半)がM字の二つ目の凸の部分を構成することは、この初婚と出産の年齢をみると、なるほどうなずけます。

また、同統計データを過去にさかのぼってみると、近年は晩婚化の傾向が確認でき、それとともにM字のくぼみとなる年齢が上がっていることから、やはり、結婚や出産・育児がM字のくぼみを作る原因だということを改めて理解することもできます。

M字のくぼみを作ってしまう直接の原因は、このような結婚や出産・育児といわれますが、間接的には、職場の制度や周囲の理解といった「働き続けることができる環境」が整備されていないことも原因と言うことができます。

「私の職場では、出産後に復帰する人はほとんどいない」、「女性は結婚後に辞めてしまうと考える人が多い」というように、肌感覚として捉えていた方は、実際のデータを見てどのように感じたでしょうか?

M字カーブの解消のために人事ができること

M字カーブの解消のために、人事やダイバーシティ推進を担う方がおさえておきたい取り組みのポイントをいくつか紹介します。問題解決のヒントとしてお役立てください。

本人の意識醸成

  • 研修やセミナーなどを活用し、女性社員本人に育児もキャリアの一つだということを理解するよう促す。
  • 出産・育児の後の将来の不安を抱かないようにキャリア形成のイメージができるように意識を醸成する。

周囲の理解を促進

  • 研修やセミナーなどを活用し、女性社員が活躍することについて正しい理解を男性社員に促す。
  • 仕事と育児の両立期にある女性社員に対する関わり方、支援の仕方などについて、上司に適切な理解を促す。
  • 可能であれば、パートナーと仕事と育児の両立などについての対話の機会を設けることができるように支援する。

制度の整備

  • ワークライフバランスの確保ができるようにする。在宅勤務などができるようリモートワークを導入・推奨したりやフレックスタイムを導入・推奨するなど、働く場所や時間に余裕が持てるようにする。
  • 女性本人のための支援制度をつくる。例えば、育児休暇取得の支援、復帰の支援など。加えて、最近話題となっている不妊治療の保険適用拡大についても意識しておく。
  • 男性が育児参加できるような体制を作る。例えば、育児休暇の取得目標を立てるなど、男性が育児に積極的に参加するように促す。
  • 家事支援サービスの活用を推進する。例えば、シェアリングエコノミーの利用など、家事や育児を家族の中で対応できない場合の支援となる情報を伝える。

いかがでしたでしょうか?

女性活躍推進に取り組む皆さんがおさえておきたい情報として、「女性活躍推進法や女性活躍推進の現状や課題」「女性の管理職比率の目標や推移」といったこともあるかと思いますので、ぜひ当社のコラムで確認してみてください。

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