ロールモデルとは。ロールモデルの効果や活用の方法・ステップをご紹介。

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個人がキャリア形成を進めたり、企業が社員のキャリア形成を支援するときに活用されるものの1つのが「ロールモデル」です。女性活躍推進に取り組む企業が行動計画の実現を目指すときにしばしば設定しているのを見かけますが、ロールモデルそのものは、性別にかかわらずキャリア形成の一助になるものだといえます。
そこで、このコラムでは、改めてロールモデルの特徴や、設定することで期待ができる効果、実際にロールモデルを活用するための方法やステップを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

ロールモデルとは。イメージ。

ロールモデルとは

ロールモデルとは、わかりやすくいえば「お手本となる人物」のことです。具体的には、自身がキャリア形成をするうえで、行動、スキル、考え方などについて学んだり模倣したい対象となる人材のことをいいます。

日本語でいえば、ロールは「役割」、モデルは「お手本」です。役割というと、つい管理職のことだと思いがちですが、仕事において役割を発揮しているのは管理職だけではありません。

  • プレゼンテーションが得意な先輩
  • 仕事の悩みをよく聞いてくれる同僚
  • 仕事と育児をうまく両立している後輩

など、ロールモデルといっても実に様々な種類があります。

そして、もうお気づきかもしれませんが、ロールモデルは1人である必要はないということです。仕事だけではなくプライベートも含めた自身のキャリアの状況や、仕事で担っている業務などに応じて、このケースはAさん、このケースはBさんというように、ロールモデルは別々であっても良いということです。

また、ロールモデルとする人は身近にいる人物が良いともいわれています。普段からその人の行動を間近で観察できたり、直接質問して教わったりできるため、自身の成長につながりやすいというのが理由です。

ですが、職場によってはロールモデルがいないという場合もあります。例えば、育児休業から復帰する人がおらず、仕事と育児の両立をしたい女性社員が模倣できる人がいないというケースです。このようなケースでは、同業他社や同じ職種の他社にいる人をロールモデルとして見つけることも必要になってきます。

ロールモデルに期待できる効果

ロールモデルが身近にいるにしても、いないにしても、ロールモデルを設定することで期待できる効果にはいくつかあります。ここでは、個人にとって期待できる効果と企業にとって期待できる効果について紹介します。

個人にとって期待できる効果

ロールモデルを設定することで、キャリアを形成していくための計画を立てるだけではなく、計画を実行しやすくなります。
例えば、ある人が「直近ではコミュニケーション力を高めたい。3年後には社内公募のプレゼンで新規事業の提案をしたい。」といったイメージを持っているとしましょう。この人にロールモデルが設定されていると、イメージしたことを実現するために、コミュニケーション力の高い同僚を模倣してコミュニケーションを円滑にする方法を学んだり、社内公募で新規事業化を実現した先輩にプレゼンのコツを教えてもらったりというように、具体的な行動に移していくことができるようになるという具合です。

このように、ロールモデルを設定すると、計画の実効性が高まり、個人の成長のスピードが上がることが期待できるといえます。その他に、ロールモデルと自身を比較することにより、自分に何が足りないのかを客観的に評価することもできるでしょう。

企業にとって期待できる効果

個人の成長のスピードが上がることで、企業としての成長のスピードが上がることが期待できます。さらに、本人とロールモデルとのやりとりが進むことで組織内のコミュニケーションが活性化していくことも期待できる効果といえます。

女性活躍推進に関連したこととしては、管理職として活躍する女性社員をロールモデルとして紹介することで、将来の管理職候補者の育成につなげることができる可能性もあります。

その他に、キャリアの見通しが立たない若手社員、定年再雇用を間近にしたシニア社員などがロールモデルを見つけることで、将来のキャリアが明確になり、離職を防止することにつながるといったことも期待できる効果として挙げることができます。

企業がロールモデルを活用する方法・ステップ

以上のような効果を得るために、具体的にロールモデルはどのように活用すればよいのかについて、ここでは個人の目線、個人を支える企業の目線でご紹介します。

個人がロールモデルを活用するための方法・ステップ

まずは、個人がロールモデルを活用するための方法として3つのステップをご紹介します。

1.キャリアイメージの明確化とロールモデルの設定

個人がロールモデルを設定するためには、まず、自身のキャリア形成のイメージを明確にすることから始めます。
明確にするには、これまでのキャリアの振り返り、自身の強みや特徴の再認、将来ありたい姿の明確化、そしてありたい姿に向かうための段取りを考えます。そして、そのありたい姿に近いロールモデルを探し、設定します。

2.ロールモデルの観察・分析

ロールモデルの設定ができたら、その人の仕事の進め方や役割の発揮の仕方などを観察、どのようにしたらロールモデルのようになれるのかを分析します。
機会があれば、その人物にコミュニケーションを取り、考え方や価値観、役割に対する期待の捉え方などを直接聞いてみるのもよいでしょう。

3.ロールモデルの行動を模倣する

ロールモデルの観察や分析が終わったら、実際に自身でもロールモデルのように振舞ってみます。
うまくいかないことがあったら、その理由を振り返り、理由と思われる点について注意深くロールモデルの観察や分析をすることも重要です。いきなりすべてをロールモデルのようにすることは難しいため、少しずつできるところから真似をしてみるのがコツです。

企業がロールモデルを活用するための方法・ステップ

次に、企業の中でも特に人事の担当の方がロールモデルを活用するための方法として4つのステップをご紹介します。

1.ロールモデルを調査する

企業によっては、例えば、新卒として目指してもらいたいゴール、中堅社員として目指してほしいゴール、ベテラン社員として目指してほしいゴール、といった、それぞれのキャリアの段階でのゴールを設定しているかと思います。
まずは、それぞれのゴールにかなったロールモデルがどれくらい自社にいるのかを調査し、実態を把握することを進めます。方法としては、アンケートを使ったり、タレントマネジメントのツールを使ったりすると効率よく調査ができるでしょう。

2.ロールモデルを設定する

調査の結果、ゴールに合わせたロールモデルになりそうな人が明らかになったら、その人にコンタクトを取り、仕事の進め方、考え方や価値観といったことをインタビューなどによって掘り下げます。
加えて、他の社員にロールモデルとして紹介してもよいかどうかを確認し、ロールモデルとなってもらえるようにしておきましょう。

3.ロールモデル社内に周知する

ロールモデルとなってくれる人が具体化したら、イントラネットや社内報などを使って社内に周知します。
実際に社内で活躍するロールモデルの仕事ぶりや仕事の価値観などを他の社員に知ってもらうことで、社員がロールモデルを探しやすいような環境づくりを進めます。研修やワークショップなどにロールモデルに設定した人を招き、参加者向けて直接語ってもらったり、質疑応答をしてもらったりという方法も有効です。
あるいはロールモデルをメンターに、育成対象の社員をメンティーにというように組み合わせるメンター制度を設けてもよいでしょう。

4.ロールモデルを育成する・獲得する

ロールモデルを調査した際に、特定のキャリアのステージのロールモデルになる人がいないことが分かった場合は、研修などを通してロールモデルになる人を育成するという方法もあります。
ですが、そのような方法でいきなりロールモデルになる人を生み出すことは難しいかもしれません。
自社内での育成が難しい場合は、社外から中途採用で獲得する方法や、副業人材を招き入れるという方法もあります。あるいは、業界団体や研修会社を通じて同じような課題を抱える企業同士で交流を深め、互いにロールモデルになる社員を紹介し合うこともできるでしょう。

まとめ 女性活躍推進におけるロールモデルと現在の活用事例

ロールモデルという言葉は、かつて女性活躍推進の文脈で目にすることが多いものでした。

その背景としては、例えば、

  • 出産や育児をきっかけに仕事を辞めてしまう女性社員が多いことに対して、仕事と育児の両立を実現している人をロールモデルとして設定することで「辞めないキャリアのイメージ」を持ってもらう
  • 女性管理職比率を上げるために、管理職として働く先輩社員をロールモデルとして設定することで、「管理職になるイメージ」を持ってもらう

というように、女性活躍推進の行動計画にあわせたロールモデルの活用が例示されたからだといえます。

現在では、女性の活躍から、全ての人が活躍する世の中の実現へと関心が移ってきています。
そのため、あらゆるキャリアの課題の解決のための一つの方法としてロールモデルの活用が位置付けられるようになってきています。

例えば、

  • ワークライフバランスの推進の一環として、イクメン・イクボスとして活躍する社員を社内で周知する
  • 従業員エンゲージメントを向上させる施策の一環として、社内でアワードを獲得した社員を社内で周知する
  • シニア人材の活性化の一環として、シニアマイスター制度を設け、マイスターとして活躍する社員を社内で周知する

というように、多様な働き方をする社員をロールモデルとして設定し、さまざまな活躍の在り方を社員に紹介する企業も増えているようです。

もし、ロールモデルは女性活躍を推進するための方法だと思っている方がいらっしゃいましたら、ロールモデルの効果や意義に立ち返って、組織全体の活性化に役立てられないかどうかを改めて考えてみるとよいかもしれません。

参考になる資料:
厚生労働省「女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」
厚生労働省が、女性活躍を推進するためのメンター制度やロールモデルの設定方法などについてまとめたマニュアルです。記載されている内容は、女性活躍推進に限定的ですが、方法は女性社員以外へのロールモデル設定と活用のための参考になります。

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