子宮腺筋症の専門医に聞く、最新の治療情報① 腺筋症に関する最新データ

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このページを読んでいる皆さんの中には、既に病院で子宮腺筋症と診断をされている人、体の不調から子宮腺筋症を疑っている人もいるのではないでしょうか。今回は日本でも数少ない子宮腺筋症外来を東大病院で立ち上げた専門医に話を聞く事で、今後の治療への向き合い方を考えていきたいと思います。

最新の情報を仕入れることがとても大切

皆さん、子宮腺筋症についての調査が初めて行われたのはいつか知っていますか? 実は日本で初めて調査が行われたのは平成26年の事。本当に最近の事なのです。数年前まで、子宮腺筋症が増えてくる30代後半~40代は出産を終え、次の妊娠を希望しない人が多くいる世代でした。そのため調査研究をするまでもなく、子宮摘出をして終了という事が当たり前の時代だったのです。

しかし女性の社会進出に伴い、30代後半~40代女性の出産や妊娠希望者が激増。妊娠希望があるから子宮を取りたくない、という時代のニーズにこたえる形で、最近研究がされてきたという背景があります。

その為、今は様々な研究がおこなわれて成果が日々アップデートされていく過渡期。だからこそ、最新の情報を仕入れていくことが重要なので、積極的に情報を収集していきましょう  。

インターネットには様々な情報が氾濫して、何が正しい情報か判断に迷うときは以下のサイトがおすすめです。

ヘルスケアラボ

厚生労働省の研究班が作成したウェブサイト。特に、病気の情報だけでなく、女性を取り巻く社会的背景の変化なども含めた解説が他サイトにはない大きな特徴。「はじめに」のページを読むと、現代社会における女性の生き方がどう変化しているのか、よく理解することが出来る為、今後の自分自身の健康管理へのかかわり方が変わるかもしれません。

女性の痛みをちゃんとケア ワタシのカラダ相談室

様々な女性疾患向けの医薬品を開発している持田製薬の運営するウェブサイト。特に「痛みノート」はあなたの体の辛さを客観的なデータに落とし込んで医師と対話することが出来るのでおすすめです。

今の研究でわかっていること

診断される年齢

子宮腺筋症の診断年齢は平均38.2歳。もちろん若くから子宮腺筋症で苦しむ人もいますが、30代後半から症状に苦しむ人が多いのが特徴です。統計を取ると子宮内膜症や筋腫は病気が発見されてから治療開始まで1年程度のタイムラグがあるのですが、腺筋症は治療開始までタイムラグがほとんどなく、辛い痛みや月経量に待ったなしの状態で訪れる女性が多いのが特徴です 。

生理痛や月経過多だけでなく、腰痛や足の付け根の痛みなど様々な痛みが現れる

多くの女性が月経痛や月経過多を主訴としますが、痛みについては子宮部分を中心とした下腹部痛の他にも腰痛、足の付け根の痛みなど、広範囲にわたって様々な所で痛みが発生します。これを総称して「骨盤痛」と医師は表現します。症状が軽い時は痛みがあらわるのは生理前後だけですが、症状が進んでくると生理前後以外でも痛みを感じるようになります。他にも、不正出血や不妊など、様々な症状を引き起こします。

痛みMAXを10としたら、8くらいで来院するケースが多い

生理痛は数字に表すことが出来ないため客観的に表現をするのが難しいのですが、現在の国際基準では「あなたが想像できる最も強い痛み」を10とし、「全く痛みがない」を0としたときに痛みがどれくらいなのか、主観を数値化したデータを利用しています。

東大病院の院内調査によると、来院時の平均回答は8となっています。

但し、ここで注意してほしいのは、必ずしも8を基準に自分の来院タイミングを考えてほしくないという事。「鎮痛剤を飲んでも生活の質が低下している状態は、明らかに病院にかかるタイミング」と東大病院の廣田医師は言います。子宮腺筋症は痛みが強く様々なブログで救急車に乗った、倒れてしまった、などの壮絶な経験談が多く書かれている為、つい人の症状と比較して安心してしまいがちですが、少しでも早いタイミングで受診をするようにしましょう。

妊娠・出産については、注意が必要

子宮腺筋症の場合、妊娠しにくい  、妊娠しても通常のケースと比較して流産、早産、妊娠高血圧症候群、前置胎盤などの胎盤位置異常など、全ての局面においてのリスクは上がります。

後期流産であれば通常の12倍、早産は3倍弱、妊娠高血圧症候群は5倍弱、胎盤位置異常は5倍弱と高いリスクがある事がわかっています。

既に子宮腺筋症と診断されている方には少しショックな数字かもしれません。ただ、これらのリスクについても、昔と比べて様々な治療法が出てきています。リスクを認識し、ライフプランに向き合い、一日も早く治療を開始する事で妊娠に至る患者さんは多くいますし、実際、多くの子宮腺筋症の患者さんが病気を乗り越えて出産をしています。

それでは、次の記事では具体的にどのような治療法があるのかを見ていきましょう。

監修医師紹介

東京大学医学部附属病院  女性診療科・産科 講師 廣田泰先生

子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症などの良性疾患~不妊症までを幅広く治療する女性ホルモンの専門家。同大学で着床外来、子宮腺筋症外来の立ち上げ。豊富なデータを基に、温厚な語り口でゆっくりと丁寧に患者に説明をするスタイルが特徴。

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