薬剤師監修:生理痛なのに薬が効かない。多めに飲んでもいい?体への影響は?

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月に一度必ずやってくる生理痛。薬を飲んで仕事に行っているけど、最近薬が効きにくくなってきた、と感じる人も多いのでは。この記事では原因を考えると共に、多くの人が抱えている鎮痛剤との付き合い方について薬剤師さんに聞いてみました。

原因1: 薬を飲むタイミングを逃している

薬を飲むことに心理的な抵抗があり、「我慢できなくなるギリギリのタイミングまで待ってから」薬を飲む人は多いのではないでしょうか。

生理痛は時間がたてばたつほど、体内の痛み成分が放出される為、薬が効きにくくなる傾向があります。「痛みが始まったな」と思ったタイミングで薬を飲むと、薬の効果をより感じることができます。また、生理痛のパターンをある程度把握している人であれば、痛みの始まる月経初日の朝食後に必ず飲むようにする、など自分の中のルーティーンを決めると薬を飲むタイミングで悩まなくて済むのでお勧めです。

Q:薬は体に悪くない? 薬を飲むのをためらってしまいます。

A:薬を飲むタイミングを逃す人の中には、体に自然由来ではないものを入れることに抵抗を感じているかもしれません。でも安心してください。

通常医薬品は、体の中で効き目を発揮した後は肝臓等で分解され、主に腎臓から尿と一緒に排出された結果、体内から消失します。

例えばイブプロフェンでは飲んで1日後に約60%が体内から消失されています。残り40%に関しても徐々に消えていき成分が体内に残る事はありません。したがって、何か有害物質が体内にとどまって体に悪影響を及ぼすということはありませんので、安心して薬をのみ、痛みをとってください。

(但し、お酒を飲みすぎて肝臓がつかれている等、不安のある方は慎重に使うことも忘れないようにしましょう。)

原因2:婦人科  疾患を発症している

下記のようなケースでは、子宮疾患を既に発症している可能性が高いです。

  • ・適切なタイミングで薬を飲んでも効かない
  • ・薬に定められている用量上限まで飲んでも効かない
  • ・薬を飲む頻度が高くなってきている
  • ・薬が効かないので、更に強力な痛み止めに変えた

通常の生理痛では上記のような痛みはあまり考えられないため、月経困難症や子宮内膜症、子宮腺筋症などの婦人科  疾患がある可能性がとても高いです。

これらの疾患は知名度の割にそのリスクがあまり知られていませんが、進行性の病気で完治方法は子宮全摘出以外方法がないため、放置すると病状が深刻になるのが怖いところ。将来的に子宮・卵巣部の手術や不妊リスクにつながる可能性が高いため、早めに病院に行き治療を受けて進行を食い止めることが大切です。

ピルをはじめとしたホルモン薬で治療をすることになりますが、ピルの効用について詳しく知りたい場合にはこちらの記事を参照にしてください。ピルを飲むと月経量が少なくなるため、生理痛が軽減される効果があります。ピルと聞くと「一部の人が使っている避妊薬では?」と思う人もいるかもしれませんが、世界中で使われている治療薬でもあります。

参考記事:ピルのメリットを知り、ポジティブに健康と美をコントロールしよう!

また、婦人科の内診に抵抗がある方は下記の記事を参照にして、婦人科クリニックを選んでみましょう。

参考記事:内診はもう痛くない? 産婦人科検診の怖さを和らげる3つのコツ 

原因3:既に子宮疾患があり、治療をしていなかったため病状が進んでしまっている

既に子宮疾患を認識しているもの、適切な治療を受けないで放置し、鎮痛薬でごまかしているという方も中にはいるかもしれません。

いずれにしても上記で記した通り、月経困難症や子宮内膜症、子宮腺筋症は進行性の病気です。進行を遅らせることこそが唯一の方法なので、必ず受診しホルモン治療を取り入れるようにしてください。

1、既に内膜症による卵巣チョコレート嚢腫摘出の手術を受け、その後にホルモン治療を受けていない場合

子宮内膜症の治療ガイドラインでは、摘出後はホルモン治療を受け再発を防ぐことが推奨されています。

(参考記事:医師監修:卵巣嚢腫は手術後が本番! 妊娠と生理痛軽減の為に大切な5つの知識

卵巣嚢腫の再発率は2年で30%と高いのが特徴です。手術を重ねると不妊化が進む恐れもある為、摘出した事に安心せず、お医者さんと二人三脚で治療を進めていきましょう。

不妊治療でピルが飲めない場合

不妊治療中は突然の休暇などでただでさえストレスがたまるもの。不妊治療の休み+生理痛で仕事に行けない、というダブルパンチは避けたいですよね。鎮痛剤が不妊治療の治療成績に影響を与えることはありませんので鎮痛剤はしっかりと飲んで体をコントロールしましょう。

なお、妊娠が判明したら鎮痛剤の使用は中止とし、妊娠中にどうしても鎮痛剤が必要な場合には医師と相談してください。

市販薬で痛みが消えない場合には、医師に相談をするとボルタレンなどのより効き目の強い薬を処方してくれるかもしれません。その場合には、合わせて胃薬も処方してもらうと安心です。

また、既に卵巣嚢腫があり、激しい生理痛を抱えながら不妊治療を行っている人の場合にはGnRHアゴニストを一定期間服用する事で一時的に卵巣嚢腫や生理痛をコントロールしながら不妊治療を行える可能性があるので、不妊治療のクリニックの先生に相談してみてください。

授乳中で鎮痛薬やピルの使用の影響を心配している場合

授乳中に薬成分が影響してしまうのではないか、というのは全てのママが気になるところ。これは薬によって違います。例えば、イブプロフェン(商品名イブ)やアセトアミノフェン(商品名タイレノール)は母乳にわずかしか影響がないので使用しても安心です 。(詳しくはかかりつけの医師・薬剤師さんに聞いてみましょう)

ピルについては、ピルに含まれているエストロゲンが母乳の出を悪くするのでNGです。授乳中でも鎮痛剤で痛みが改善されない場合には、疾患治療の観点では授乳を中止し、ホルモン治療を行うのが望ましいでしょう。しかし、授乳に対する考え方は人それぞれ違う為、どのような方針で生理痛と向き合っていくのか、お医者さんと相談していきましょう。

薬を飲みすぎると、徐々に効かなくなってくるのでは?

ここまでは薬を飲むことで痛みと上手に付き合っていきましょう、という事をお話ししてきました。

しかし薬を飲みすぎて効かなくなると困るのでなるべく飲まない、という人は多いのではないでしょうか。薬は説明書に書かれている用法用量を守っている範囲であれば、耐性が出来て効かなくなる、ということはありません。説明書に記載されている連続使用は2日程度ですが、医師に相談をし、連続服用についてアドバイスをもらう事で服用を続けることも出来ます。

Q:薬が効かない場合には、少しくらい多く飲んでも大丈夫?

頭痛持ちの人が用法用量を超えて使用を続けると薬物乱用頭痛という症状が現れることがあり、痛みにより過敏になってしまいます。特に一か月に15日以上薬を服用するケースが3か月続くと発症するケースが多くみられます。

痛みが引かないからといって用量を超えて飲むことは副作用が起きやすくなることも考えられるので、NGです。鎮痛剤が効かない場合には、ホルモン療法や手術など他の治療を医師と相談する必要があります。

既に一般的な薬が効かない時点で疾患がある可能性が高いという事を思い出し、必ずクリニックを受診するようにしましょう。

薬剤師さんに相談しよう

薬局を訪れる人の中には、薬剤師さんにどんな事を相談すればいいのかわからない人もいるのではないでしょうか。

多くの薬剤師さんは患者さんの健康や心の悩みに寄り添いたいと日々考えています。

例えば生理痛で困っている人には、抗炎症成分が入っていて頭痛よりも生理痛に効果を発揮する薬を紹介したり、生理に伴う腹痛・腰痛に効果のある芍薬甘草湯などの漢方を紹介したりすることも可能です。(漢方は長期服用可能な印象を持っている人も多いと思いますが、長期服用が出来ない薬などもあり、商品によって性質が違う為注意が必要です。薬剤師さんに聞いてみてください。)

一口に生理痛と言っても、人によって症状や悩みは違うはず。薬剤師さんは、忙しくて中々病院に行けない人にとっては一番身近な医療者です。色々とコミュニケーションをとり、いやな生理痛を少しでも和らげましょう。

監修、取材協力:薬剤師 横浜ゴローさん

大手薬局に勤務する薬剤師さん。豊富な知識で薬剤師向けのセミナー講師としても活躍。大の横浜好き。休日には、健康とリフレッシュがてら、みなとみらい・中華街を散策しています。

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